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　生徒自ら問いを立て、情報を収集・分析し、周囲との意見交換や協働を通し答えを探す「探究型学習」。正解が用意され、暗記偏重の勉強法では養えない思考力や判断力、表現力をつける学びとして注目されている。2022年度から高校の学習指導要領にも盛り込まれ、山形大の佐藤俊一教授（62）は山形県での推進に情熱を注ぐ。

　探究型学習に本格的に向き合ったのは15～16年度の県教育次長時代、導入に向けた制度設計に携わった。県立高3校に探究科が新設された18年度、そのうちの山形東高（山形市）の校長に着任した。「全国的に見れば周回遅れ」という当時の県内で、生徒が主体的に自分らしい進路を選択する力を養う「キャリア教育」と組み合わせ、企業や行政など実社会との関わりを重視した取り組みを加速させた。

　活動を学校外へと広げる原点には、自らが「実社会との接点を持ったキャリア教育不在の犠牲者」という思いがあるからだ。小さい頃から機械いじりや天体観測などが大好きで高校は理系に進んだが、社会に出ることを考えて悩んだ末、東北大文学部に進学。卒業後の就職でも迷い、故郷の山形で英語科の高校教諭になる道を選んだ。

　20年3月まで校長を務め、山形大、東北大、東北芸術工科大、山形市などと連携協定を締結した。県内有数の進学校ながら、企業見学を積極的に取り入れ、各界の人材を講師に招いた講座「探究塾」を充実させた。授業外のテーマに取り組む生徒たちを支援する部活動「探究部」も設立した。

　さらに全国に先駆けた試みに発展させ、あらゆる分野で不可欠になりつつあるAI（人工知能）に着目。産官学連携で学校の枠を超えて人材を育成する「やまがたAI部」の発足に尽力した。局所的な天気予報や運動部と協力したデータ解析から、就職面接に適した髪形の判定といったユニークなものまで、高校生がテーマを見つけ、AIで答えを探している。

　20年8月の発足時は11校だった参加校は現在、県外3校を含め、24校に増えた。新型コロナウイルス感染拡大にもオンデマンド方式の講座を充実させて対応。成果発表と技能を競う場として毎年3月に「やまがたAI甲子園」を開いている。来年度もさらに参加校は増える見込みだ。全国規模の“甲子園”開催も夢物語ではなくなっている。

　「部活動の指導を地域へ委ねる地域移行の走り。実社会での成果は遅れて出てくるが、生徒は着実に変わってきている。『AIでコロナ治療の創薬ができないか』なんて生徒から声が上がったのには驚くと同時にうれしかった」と手応えを感じ、難関大への進学実績でも自信を深める。

　20年度から山形大エンロールメント・マネジメント部教授となったが、学校や教育行政の現場で培った経験を生かし、やまがたAI部の事務局で企業や大学、地域との調整役を担う。「大学でテーマを発展させている卒業生もいる。子どもたちが可能性を花開かせていくのを見るのは本当に楽しみ。当分の間は手伝っていきたい」と熱意は衰えない。【横田信行】